Thursday, 28 March 2019

冬の北海

先日ノルウェー沖で、豪華客船のエンジンが動かなくなった。乗員1400人の内500人がヘリで救助される事態になったが、幸い人命に異常はなかった。船はViking社でノルウェーの船籍であった。バルト海で良く見かけた船会社だが、事故の原因がオイルの積載不足と聞いて驚いた。Viking社のクルーズは、北海近辺でも10泊だと70万円もするから、助かったとは云えこれから破格の賠償交渉が大変だ。

思い出したのは、アリエスタ・マクリーンの小説「北海の墓場(原題:Bear Island)」である。”事実は小説より奇なり”と言うが、彼はその反対で、歴史をフィクション化する天才である。特に戦記物では多くの作品を残していて史実より面白い。「北海の墓場」は戦後のノルウェーの孤島を舞台にした作品である。ナチが隠した黄金を探すトレジャリーハンターの物語で、最後まで犯人が分からない構成になっている。特に冬の北海を小舟で渡るシーンは、船乗りでなければ書けない臨場感を醸し出している。随分前に読んだが、海の寒さが伝わってくるようで凄かった。

勿論クルーズ船にも乗った事がないし、まして冬の北海にも知らない。ただこうして事件があると、小説のお蔭で身近に感じる。山に登っていないのに、山岳小説を楽しむ人を、英語でArmchair climber と呼ぶという。以前からその海のヴァージョンを何て呼ぶのか、誰かに聞こうと思って忘れている。

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