昔の女が会社に訪ねて来る!そんな怖い出来事があった。知人のSさんは、若い頃アジアの某国に駐在した。当時は、単身の駐在員には身の世話をする女性がいた。食事や清掃だけでなく、時には個人的な関係になる事も多かった。特に親日的な国なら、人々は至っておおらかだ。そんな駐在員に待っているのは帰国命令である。突然の終わりに、当時の人々は100万円を渡すのが慣習になっていた。しかしSさんはそれを怠ったのか、そのツケは大きかった。帰国したある日、本社1階の受付から「外国のお客様がお見えです」と呼び出され、行ってみると見覚えのある女性が立っていたという訳である。その後どうなったのか知らないが、考えただけで恐ろしい。
そう言えば、銀座のママさんもいた。ある日、役員だったKさんから国際電話が掛かってきた。それは家に帰る社用車からだった。「今度、馴染みのクラブのママが行くので宜しく頼むよ!食事代は後で私が払うからさ・・・」という内容だった。それから一か月程して、その女性が現れた。銀座のママにしては地味な人だった。丁重にフランス料理でランチを持て成し、無事任務は終了した。暫くして帰国した際に、その時の勘定書を持ってKさんの処を訪れようとした。ところが何度電話しても、秘書は「今、K社長は不在です」と繰り返す。ひょっとして払いたくないのだろうか?そんな事が頭を過り、その内嫌気が指して諦めた。今更銀座のママなんて持ち出さないで欲しい、そんな気持ちも分からないではないが、それにしても踏み倒され酷い目にあった。
かと思えば美談もあった。タイに良く仕事で行っていた時に、政府機関の担当官にPさんという女性がいた。実家は医者の育ちがいい人で、地味な役所にあってひと際目立つ人だった。そんなある日、世話になったPさんの慰労会を皆で披くことがあった。聴くと、Pさんは元外資の銀行に働いていたが、「尊敬していた日本人のボスが帰国するというので、給与は安いが、今の処に代わりました」と言う。バンコクの日本人というと、中には威張り散らす輩も多かった時代だから、立派な日本人が居るもんだと感心した記憶がある。実は これにはオチがあって、何年かしてその日本人に偶然お目に掛かった。確かにPさんから聞いていた通りの方で、こちらまで誇らしい気持ちになった。
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