Saturday, 12 January 2019

変わり往く湯沢

今から30年ほど前だったか、越後湯沢にスキーに行った時だった。たまたま入った小さな居酒屋があった。数人座れるカウンターの店で、女将さんが一人で切り諸していた。忙しくなると客が反対側に入って接待する、その和やかな雰囲気にすっかり気に入ってしまい、以来30年通い詰めている。暫く前に息子さんが継いだが、行く度に女将さんが夏に仕込んだ山菜を惜しげもなく振る舞ってくれる。酒飲みには、その心遣いが何ともなく嬉しい。

居酒屋の2階は民宿なので、湯沢に行く時は必ず泊まる事にしている。隙間風も入る古い家屋だが、引いている温泉は本物である。決して広くは無いが、湯沢の町を感じながらいつも浸かっている。若い頃は仕事のストレスも多かった。しかしそこに来ると不思議とスーッと疲れが取れた。外に出ると吐く息が白く、温泉街のネオンが雪にマッチし何とも言えない風情があった。宿の嫁さんの実家だったスナックにも良く通った。鄙びた場末のバーだったが、何年か前に店は閉めてしまった。

湯沢の楽しみの一つは、新潟の幸を求めた居酒屋巡りである。結構当たり外れがあり、いい加減な処も多いが、いい店に出会うと感動ものである。この前も、新鮮な寒ブリに緑川の熱燗が合う店を見つけた。2代目の夫婦が暖簾を守って60年という。魚の出汁で作ったラーメンも旨い。以前、醤油ラーメン派のM君と行って以来、湯沢に来ると必ず寄っている。風味とコクが素晴らしく、密かに日本一のラーメンだと思っている。しかしその湯沢も昨今の外国人観光客でごった返し、ややもすると入れない事も多くなってきた。先日行き付けの小料理屋で、「タイからのお客さんで一杯です!」と断られた。今や狭い日本列島、どこに行っても外国人観光客ばかりだ。せめてこんな処までは来ないで欲しい!そんな気分になっている

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