暫く間に、吉村昭著「ニコライ遭難」を読んだ。相変わらずの綿密な取材で、読み応えのある本であった。粗筋は、ニコライ皇太子が明治初頭に来日して、大津で巡査に殺傷された事件の話である。ただ帰港した当時の長崎の街並みや市民の生活振りが、とても丁寧に紹介れていて、そっちの方がむしろ興味深かった。皇太子は行く先々で日本人から歓迎され、店で土産物を買ったり寺などにチップを置いて行った。それから10年後、日露戦争が起き両国は相対することになるのだが、改めてその頃っていい時代だったな!そう思えたのであった。
ロシアは日露戦争の敗戦を契機に内乱が始まり、それがロシア革命へと繋がって行った。ロマノフ王朝も、1918年に家族と共にとある地下室で銃殺され終わってしまった。それから社会主義の時代が始るのだが、今回こうして中欧を旅すると、改めてその無毛さを感じるのである。あれは一体何だったか?日本でもマル経と称する一大勢力が輸入されたり、とても他人事とは思えない。そして思ったのは、ロシア革命なんてない方が良かった!ニコライ皇帝の時代が続いた方がよっぽど良かった!という歴史のタラレバである。
もう一冊、これは旅の途中で読んだアンリ・トロワイヤ著の「イヴァン雷帝」である。「女帝エカテリーナ」「大帝ピュートル」の三部作の一つだが、工藤康子さんの訳が素晴らしく、スラスラと楽しめる名著であった。イヴァン雷帝はロシアの生んだ元祖独裁者であるが、その後のスターリンから今のエリティンに至るまで、ロシアの国ってあまり変わっていない!?と気が付くのであった。当時イヴァン雷帝が対峙したのはロシア貴族だったが、それは今のロシアマフィアである。正に禍福は糾える縄の如しで、600年経っても国民性は変わらない。ロシア革命がなければ、スターリン時代に40百万人も粛清されずに済んだり、挙句は東西冷戦もなかったかも知れない。況やチェコやハンガリーの人が、もっと伸び伸び育ったかも知れない・・・、そんな事を思うのであった。
No comments:
Post a Comment