Thursday, 7 June 2018

黒い十字軍

北朝鮮の核廃棄が迫っている。昔からICBMの脅威はあったが、1960年代に、あの007の映画「サンダーボール作戦(Thunderball)」でも、思えば核弾頭の争奪戦だった。海底に隠した核を、敵味方のスキューバーが争奪するシーンは見応えがあった。その頃の、ショーン・コネリーは本当に格好良かった。

それにヒントを得たかのだろうか、1961年に書かれたアリステア・マクリーン著「黒い十字軍(The Dark Crusader)」は、古い本だが中々読み応えのある小説である。冷戦の最中、何とオーストラリア人が長距離弾道弾を開発し、米ソに揺さ振りを掛ける話である。謎の基地には雇われた中国兵士がいるので、途中まで黒幕は中国人かと思ってしまう。しかし書かれた年代を思えばそれは非現実的であった。東西の冷戦を利用して、漁夫の利を得ようとする試みは、今で思えば稚拙な処もあるが、モノクロの世界はやはり迫力が違う。

マクリーンは戦争を戯曲化する天才である。それは着色された事実だから面白いのである。その創造の世界は、「事実は小説より奇なり」の反対である。彼の傑作は「荒鷲の要塞(Where Eagles Dare)」だと思う。映画にもなっているが、何度見ても飽きない不思議な作品である。「黒い十字軍」もそうだが、どちらも黒幕は英国人の二重スパイだったオチが付く。早く種明かして、後は辻褄合わせに走る処、それを延々と焦らない根気がある。その仕掛けといい、つくづく英国人は我慢強い国民性!と感心してしまう。

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