Saturday, 16 June 2018

消したい過去

暫く前に、ある犯罪に詳しい人と話す機会があった。彼によると、一度犯罪を犯して前科が付くと、中々社会に受け入れて貰えず、また犯罪を繰り返す人が多いという。確かに相手が罪人と分かれば、普通の人なら気持ちが引いてしまう。そんな時、犯罪者なら誰しも自分の過去を消してしまいたい、そんな誘惑に心が動くのは容易に想像出来る。

最近、アマゾンプライム会員は無料動画が見れると知ったので、早速「飢餓海峡」と「砂の器」を観てみた。どちらも暗い過去を持つ男の話である。男は戦後に社会的な名声を博すが、ある時自身の過去を知る人物が現れる。ただ今更そんな事実を公にする訳にもいかず、結局その人物を殺害してしまう。映画は白黒で、戦後の復員者も出て来る。極度の貧困と差別が事件を生んだ、そんなメッセージも伝わってくるが、それにしてもこの頃の映画は迫力があった。

自身の過去を消し去りたい、それは海外でも同じで、あのジェフリー・アーチャーのクリフトン年代記でもそうだった。恋する女性の父が自身の父だった事が分かり、その過去から逃れたいと、第二次大戦中に沈没した船の犠牲者に成り代わった。しかしその犠牲者が犯罪者だったことが判明し、思わぬ嫌疑が掛かってしまう。都合の悪い過去を消し去ろうと、足掻けば足搔く程その糸が絡まって行く。宿命から逃れることは容易ではない。ただ少し不条理も気にもなる・・・。

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