Tuesday, 8 May 2018

俺の夢乗せて

先日、加山雄三さんの光進丸が燃えた。永年のファンにとっても、他人事とは思えない事件だった。光進丸は、あの「桟橋に立つ君の肩から海鳥たちが飛び立っていく・・・」の歌にもなっている。良くカラオケで歌ったものだ。それだけでなく、加山さんの多くの海の歌はこの船から生まれたから猶更だ。その足場が無くなってしまったのだから、とてもCDを聞く気にもなれない。事件後のインタビューで「半身を失った・・」と言っていたが、それはファンも同じである。

あれから一カ月経った。たまたま彼は連休中の特ダネ番組に登場していた。司会の小倉さんに心境を聞かれ、天から試練を授かったみたいな言い方をしていた。長いコンサートが終わり、打ち上げが始まる矢先にそのニュースを聞いたからだ。これから伊豆に戻り、お世話になった人を船に呼んで持て成す予定もあったらしい。そんな事もあり、やたらに自分を責めていた。

加山さんは若い頃、親戚の保証人になったばかりに、多額の借金を背負った。若大将のスターから、一文無しのどん底生活を味わった話は有名だ。私はその頃の「追いつめられて」とか「荒野を求めて」の歌がとても好きである。どんどん身近な人が離れていく寂しさ、初めて知る現実を若者らしく歌っていた。その後、それが肥やしになり、歌に深みが増して80年代の大きな飛躍に繋がった。今回のことで、加山さんが予てより、船でゴールデンブリッジを潜りたいみたいな話をしていたのを思い出した。それは勿論世界一周の航海だ。コンサートでは、よく「俺に付いてこい!」と言っていたが、ファンもそれが試されているのかも知れない。81歳の先輩に対し失礼かも知れないが、まだ残る半身があるなら、また俺の夢乗せて海に羽ばたける。

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