Wednesday, 7 February 2018

ツークシュピツェの飛ぶ教室


日曜日のTV番組、サンデーモーニングを見ていたら、今ベストセラーの「君たちはどう生きるか」の話題になった。するとコメンテーターの誰かが、「あの本は飛ぶ教室に似ていますね!」と言った。あのドイツ人作家ケストナーの作だが、どちらも戦時中の言論統制の厳しかった頃に書かれた本である。主人公も中学生位の子供である。気になったので早速図書館から取り寄せて読んでみた。吉野さんの本は教条的でしっくり来なかったが、こちらの方は滑らかなタッチが快かった。子供のケンカで傍観した方も悪い!と先生が叱っていたのが、風刺掛かっていた。

その「飛ぶ教室」の冒頭に、ドイツの主峰ツークシュピツェが出て来る。バイエルン地方に聳えるオーストリアとの国境の山である。小説ではそこで少年が夏休みの宿題で小説を書く。少年が書いた小説は学芸会の脚本で、エジプトや北極に飛ぶ短編だった。空想豊かな処はあのジュンヌ・ベルンそっくりだった。ドイツ人の想像力が豊かだったのか、それとも欧州の風土がそうさせたのか、中々日本の子供には真似できない世界だ。

ところで、その「飛ぶ教室」を最初に教えてくれたのは同僚のH君だった。10年程前にH君とミュンヘン郊外に出張した時、そのツークシュピツェに登ったのが縁だった。ホテルでレンタカーを借り、1時間ほどでドイツアルプスの麓に着き、そこから山頂まではロープ―ウェーで行くのだが、その時H君は「この山って、あの飛ぶ教室の舞台ですよ!」と言う。子供頃に読んだ記憶が蘇ったらしく痛く感動していた。山頂から眺める景色は素晴らしく、時間を超えて正に本の世界が飛んで来たのであった。

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