その板門店の越境事件は、30秒近い映像が再現されリアルだった。国境に向かってフルスピードで走るジープと兵士の銃撃など、まるで映画のシーンを見ているようであった。そんな矢先、本棚から朝日新聞特派員が40年以上前に書いた「韓国・光と闇」を取り出して読んでみた。するとそこには意外な事が書いてあった。
それは1967年3月の話だが、やはり板門店で起きた事件であった。国連軍と称する米軍将校が休戦委員会に出席し帰る時、北の朝鮮中央通信の記者が突然車に滑り込んできた。咄嗟に亡命と思った米軍の車は急発進して現場を離れた。後ろからは、北の兵士が銃撃してきたが、不思議と一発も車に当らなかった。亡命に成功した記者の名前は李穂根(イ・スグン)と言って、韓国で手厚く保護されそして結婚した。しかし暫くして2重スパイの嫌疑が発覚した。逃亡先で保護され、脱北から2年後に処刑されたという。遺族は濡れ衣だと訴訟をしていたようだが、何が本当だったのか闇の中である。
そんな事もあって、ひょっとして今回の亡命もひょっとして北のスパイなのだろうか?と勘繰った。確かにいくつもの検問を容易にすり抜けたことや、銃撃されたが急所を外れ生き延びたのは不自然だ。何が本当で何がフェイクなのか、余所者には分かり難い。ただ我々が考える位だから、今頃ソウルでは大変な事になっているのだろう、と思ってしまう。
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