Wednesday, 14 June 2017

ワルティング・マチルダ

昔、「渚にて(原題:On The Beach)」という映画があった。原子爆弾による第三次世界大戦で地球が汚染される中、唯一被害が軽かったオーストラリアを舞台にした物語である。バックの音楽は、あのオーストラリア第2の国歌とも言われるワルティング・マチルダ(Waltzing Matilda)だった。その軽快なメロディーは、悲壮な映像とは対称的に快かった。

そのワルティング・マチルダ(意味はワルツを踊るマチルダ)のマチルダだが、元々は1600年代の30年戦争で兵士に同行した女性の名前だそうだ。それが転じてオーストラリアでは放浪者が愛用する毛布の名前になったと言う。歌は放浪者が野宿する中で、寝食を共にする毛布を歌ったもので、その軽快なリズムとは裏腹に寂しい当時が伝わってくる。これもスコットランド系音楽の不思議で、その陽気さや力強さは一体どこから来るのだろうか?

実はこの歌を最近聞く切っ掛けになったのは、とある老夫婦と関係している。老夫婦の奥さんは寝たきりの脳梗塞で意識はなく、いつもご主人が看病している。話し掛けても返事はないが、不思議と音楽を聴かせると反応するらしい。特にこのワルティング・マチルダは頬が緩むと言う。それは老夫婦が新婚旅行に行ったのがオーストラリアだったからだ。この曲から当時の記憶が蘇ってくるらしい。

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