Tuesday, 30 May 2017

占守島の物語

昔、北海道県庁を訪れたことがあった。ダビデの星ではないが、何故かサッポロビールのような赤い一つ星がビルに付いてた。その一室が北方領土の展示ルームであった。ガランとして部屋に、パネルとパンフレットが置いてあったが、人気も疎らで忘れられたような雰囲気だった。

その北方領土返還に向け、また両政府の間で行き来が始まろうとしている。ただ普段の生活とあまりに離れている場所だけに、余り関心が高まらない。そんな矢先、新田次郎の「終わらざる夏」を読んでみた。物語は終戦間近に、最北端の島であった占守島に招集された通訳の話である。小説は情緒的過ぎて自身の趣味ではなかった。ただ玉音放送を聞いて武装解除しようとした矢先、上陸したソ連軍に対し、戦わざるを得なかった描写は貴重だった。

何より400人の若い女性を、後方の根室まで脱出に成功した話は胸を打った。あれから70年以上経つ。杉原千畝の救ったユダヤ人ではないが、その女性達の戦後はどんなだったのだろう?結婚し生まれた子供、孫、ひ孫が沢山いるはずだ。そんな女性たちの過去を遡り、島に残り戦死したりシベリアに送られた将兵と重ね合わせると現実がリアルになりそうだ。

占守島は今でも立ち入り禁止で時間が止まっているという。それにしても日本が持っていた千島列島って、とても広かった。

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