バルカン半島のマンガがあると聞いて読んでみた。坂口尚の「石の花」全五巻であった。20年前に出版され作者は既に亡くなっているが、それにしても良く出来ている。ストーリーは第二次大戦下のユーゴスラビアである。ナチの侵攻で国を二分する内戦が起きる。作者は手塚おさむ氏の弟子だと書いてあったので、そう言えば「アドルフに告げ!」に感じが似ている。
物語の中に、ニッシュの収容所長という人物が出て来る。二ッシュ(Nis)は昨年の旅で訪れた町だったので目に止まった。今ではコソボに近いセルビアの都市になっているが、かつてはローマの皇帝を3人も輩出した古都であった。そこにナチが収容所を作り、今でも保存されている。2階建ての建物で収容所としては初期のものだ。ユダヤ人が多かった街だったこともあり、35,000人の住民の内10,000人がここで処刑されたという。一部屋に50~150人が詰め込まれ藁の上で寝ていたと係りの人が説明してくれた。それを再現した暗い部屋に佇むと、どこからか声が聞こえてくるようで怖かった。
町にはオスマン軍がやって来た時、セルビア人の首を壁に埋め込んだ「ドクロの塔(Skull Tower)」もある。どちらもまるで昨日の事のような、時間を感じさせないリアルさがある。
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