その高野山行く前日、大阪の梅田に泊まった。駅から繁華街を歩くと曽根崎に出た。ここが曽根崎心中で有名な一角かと、こじんまりした入口から地元の露神社に入り「徳兵衛とおはつ」の像に出会った。浄瑠璃は見たことはないが、今から300年の昔、ここの醤油屋と恋に落ちた女郎の哀れを思い浮かべ、暫し思いに耽った。
大阪を最初に訪れたのは今から30年前だっただろうか、どこからか匂ってくるドブ川の悪臭とゴチャゴチャした街並みは凡そ好きになれなかった。加えて阪神電車の鄙びた茶色と、その車内で聞こえるどぎつい大阪弁には閉口した。以来、いつまで経っても土地勘が出てこないのはその為と思っている。
ところが最近何度か訪れている内に、段々イメージが変わってきた。それは何と言っても食事が安くて旨い!の一語に尽きる。一緒に行ったAさんが「曽根崎にはいい寿司屋が多いです」と教えてくれた。気が付けば、地元の老舗「亀すし」の前だった。本店と総本店の二つが狭い通路を隔てて向かい合っている不思議な店構えだったが、活気のある店内の雰囲気が外から伝わって来た。結局総本店に入り3つ4つ摘まんでみた。どれもネタは新鮮で安かった。酒が廻って来るうちに、さっきのおはつを思い出し、今も変わらぬ浪速の風情に浸ったのであった。
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