昨年の小林秀雄賞を取った本だというので、小熊英二著「生きて帰って来た男」を読んでみた。父親のシベリア抑留と、戦後の半生を描いたノンフィクションだった。ごく平凡な市民が戦争に巻き込まれ、過酷なシベリアで生死を彷徨う・・・まるで濁流に飲み込まれた小枝のようであった。
本の中に死亡率の話があった。ドイツ軍の捕虜になったソ連人は6割、逆にソ連軍の捕虜になったドイツ人は3割、シベリアに抑留された日本人は1割が死亡したという。ソ連の扱いが良かったのは意外だった。中でも収容所の奥さん達は温かったようだ。そう言えばインドまで6000kmを歩いた「脱出記」も、看守の奥さんの手心があった。
読んでいて、映画「ひまわり」を思い出した。ソフィア・ローレンと「戦争と平和」のリュドミラ・サベリエワの演技が冴えた作品だ。ロシア戦線で行方不明になったイタリア人の夫を探すストーリーである。背景には、戦争で男女比が1:9になってしまった現実があった。華々しく鉄砲を撃ち合うばかりが戦争ではない・・・。
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