エミール・ゾラの「居酒屋(原題:L'Assommoir)」を読み直してみた。最近、元知事の石原さんがバルザックを良く引用するが、歳を取って来ると、この深い人間味が快いのかも知れない。
舞台は1876年のパリ、だから登場人物の中には子供をクリミア戦争で失った老人も出て来る。ストーリーは再婚した洗濯女の半生だ。主人は最初気丈だったが、屋根から落ちてから居酒屋に入り浸るようになる。それを奥さんが毎日飲み代を渡し支えるが、そのどん底の生活風景が何ともパリらしくコミカルである。昔読んだ、G・オーウェルの「パリ・ロンドン放浪記(原題:Down and Out in Paris and London)は少し前のパリだが、これも同じであった。日本なら悲劇になるのに、どうしてパリだと喜劇になるのだろう?
フランス人はペチャクチャと良く話す人種だ。同じことを、縦にしたり横にしたりして何度でも繰り返す。単刀直入の日本語とはやはり何かが違う。小説の中でも、誰もが勝手にしゃべり適度に聞き流している。住民の喧騒が聞こえてくるようだった。
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