Tuesday, 2 August 2016

タルノボの風


トランシルバニア地方の山から下り、首都のブカレストに入った。中心に近づくと白い建物群は、何か無機質で気持ちが悪かった。チャウシスク時代の独裁国家、共産主義、そんな負のイメージが募るのだろうか、ビルの唐草模様が骨に見えてくる。その中で一際大きな建物が国民の館と称する迎賓館である。ギネスブックによるとペンタゴンに次ぐ行政建築の大きさらしいが、その巨大さと豪華さに絶句した。ツアーがあるというので参加すると、2時間も連れ廻された。ガイドによると、チャウシスクがモデルにした体制の一つが北朝鮮だったという。片や革命で銃殺され、片や依然と体制を維持している・・・。

そのブカレストから南に1時間程走るとドナウ川に出た。ドイツの黒い森から延々2800Km、ここルーマニアとブルガリア国境である。茶色っぽく川幅は2~300mはあろうか、とても泳いで渡れる距離ではない。橋を渡るとそこはブルガリアだった。

その日はダルノボ(Tarnovo)という町に泊まった。ホテルの主人が12世の首都だったと教えてくれた。美しい高台のテラスで、乾いたハンバーグに甘いブルガリアワインを頼んだ。眼下には蛇行した川と家々が拡がり、対岸に廃墟も見える。夏の風がとても快かった。暫し時間が止まり、そこに居る事が不思議だった。

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