昔、とあるベルギー人夫妻をお世話したことがあった。その時、お礼にCDを頂いた。それはベルギーの国民的人気歌手、ジャック・ブレル(Jacques Brel)の定番だった。ブレルは50~60年代に活躍した人で、強ち美空ひばりや裕次郎のような存在だ。フランス語圏の歌手なので、歌詞は勿論フランス語だった。シャンソンといえば、エディット・ピアフのような戦前のクラシックしか聴いたことがなかったので、その現代風なメロディーは正直あまり親しみが持てなかった。
ところが最近家にやってきたフランス人にこれを見せると、「このCDはいいよ!」と絶賛された。中でも、“私を捨てないで(Ne Me Quitte Pas)”の歌詞が素晴らしいという。そこで改めて聴き直してみたが、やはり重苦しく思い詰めた旋律がどうもしっくり来ない。
その逆もある。バルト海の行き付けのパブに、当時自宅で良く聞いていた徳永英明のCDを持って行ったことがある。それを掛けてもらおうとカウンターの女の子に頼もうと思ったが、ちょっと思い止まった。掛けてみて「何これ?」と思われたらどうしよう、そんな気持ちが先に立った。国民的なセンチメントは微妙に違うから慎重になる。
No comments:
Post a Comment