何度読み返しても飽きない一冊が、A・デュマ「モンテ・クリスト伯」である。痛快な復讐劇も然ること乍ら、孤島に眠る宝石、牢獄で出会った神父に生涯の教育を受ける下り、奴隷と称する褐色の美女・・・想像の世界とはいえ、どれをとってもエキゾチックで好奇心が掻き立てられる。
それもそのはず、これらの下地はデュマの生い立ちと関係していたことが分かった。最近翻訳されたT・リース著「忘れられた英雄アレックス・デュマ」である。彼の父はカリブ海の仏領に生まれた黒人との混血だった。武勇に丈てナポレオン時代に将軍にまで上り詰めたが、エジプト遠征の帰りにイタリアで捕虜になり苦汁を舐めた。その父の人生を題材にしたのがモンテ・クリスト伯だった。
訳も良かったが、原題が「栄光、革命、裏切り、真のモンテ・クリスト伯(Glory, Revolution, Bettayal, and The Real Count of Monte Cristo)にも拘わらず、日本語のタイトルは「ナポレオンに背いた黒い将軍」と、ちょっとこれにはどうかと思った。ともあれフランス革命前後の植民地、破天荒な先祖の生き様が蘇りとても面白かった。ピュリッツァー賞を取ったのも頷けた。
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