日経新聞の夕刊に心の玉手箱というコラムがある。著名人が自身の大切な一品を紹介している。自分だったら何にするだろう、そう思うと真っ先に浮ぶのが少年のブロンズ像である。
今から30年近く前になるだろうか、自由が丘の街を歩いていた時に偶然見つけた。少年がポケットに手を突っ込み、視線を落とし自信が無さそうに立っている。シャツはだらしなく、足元の空き缶は空虚な雰囲気を醸し出している。思わず足を止め店に入った。とても高価ではなかったが、さして安くもなかった。持ち合わせがなかったので、一週間して取りに行った記憶がある。
気に入ったのは、自身の少年時代と重なったからだ。感受性が豊かな反面、落ち込みも大きい。色々な事に自信がなくなり、将来に対する不安が募る。このブロンズを見ていると、忘れかけた時間が蘇る。
No comments:
Post a Comment