日本は食文化では世界一、それでも連日これでもかとばかりテレビのグルメ番組が絶えない。衣食住の中で、食は何といっても一番の関心事だ。ただ個人的には「武士は食わんど高楊枝」をモットーとしている。食へのこだわりを始めるとキリがないからだ。それでも時々美味しいものを食べるとやはり嬉しくなる。
先日、久しぶりに天ぷら屋の「つな八」に行った。喧噪の繁華街にあって、暖簾を守る老舗だ。夕方というのに客は少なく、それでいて従業員はキビキビしているから本物だ。口の中で蕩けるようキス天、天ぷらに合う純米吟醸酒、ごはんも旨くとても居心地が良かった。
昔から天ぷらと寿司は日本料理の代表で、外人に人気がある。ただ寿司は生魚故、初めて日本に来た外人には必ずしも受け入れられなかった。その点、天ぷらは人気が高かった。宿泊代が此方持ちの時代、連日ホテルの高級天ぷら屋で食事を済ませた輩もいた。つな八で飲んでも、値段的には左程居酒屋と変わりない。改めて老舗の奥深さを実感した一夜だった。
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