今から30年以上前になるか、夏の軽井沢に、それも万平ホテルに1週間滞在したことがあった。今から思えばお金があったのだろうか、一緒に付き合ったのがアメリカ人のWさんだった。
Wさんは当時ICUに留学していた学生だった。学生と言っても風貌は30代半ば、学生と言ってもジャパン・タイムズの仕事をしていたり、学者の片鱗があった。そもそも中国に関心を持ったバークレーの学生だったが、入ることも出来ず仕方なく日本に来た。その彼がひょんなことで我が家に来るようになり、夏休みを一緒に過ごす事になった。
万平ホテルには、気が付けばジョン・レノンと小野ヨーコ夫妻が泊まっていた。時々見かけたが、音楽には無縁だったので、当時は気にならなかった。そんなある日、彼は先生に会いに行きたいと言う。先生は大塚久雄教授、東大からICUに移り、全集の出版を準備していた社会科学の大御所だ。レンタカーを借りて師の別荘まで届けると、2人は何やら楽しげに話し合っていた。運転手の私は只管待たされたが、最後に先生から「運転も労働ですね!」と言われた。それがとても印象に残っている。大塚久雄と言えば、マックス・ウェーバーの大権威、流石知らない人は居ない雲の上の人だ。ひょんな処でお目に掛かり驚いた。Wさんはその後オックスフォードに渡り先生になった。軽井沢と聞くと、その時の事を思い出す。
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