歌劇「ボリス・ゴドノフ」で名高いボリス・ゴドノフは、17世紀のロシアのツァーリ(王)である。タタール人ことジンギスカンの末裔から解放された、正にロシアの夜明けであった。そのゴドノフの前に現れたのは死んだはずの王位継承者ドミトリーであった。結局そのドミトリーは偽物だったことが分かり、25歳の若さで死んでしまう。
ロシアは広大で大いなる田舎国家だ。偽物と分かっても、こうした英雄如きが現れるのを待望している向きもある。たまたま読んだロバート・ハリス著「アルハンゲリスクの亡霊(原題:Archangel)」は、スターリンの亡霊をテーマにしたフィクションだった。スターリンが死んだ時、金庫から秘密のノートが盗まれる、そこには一人息子の消息が書かれていた・・・という物語だ。そして何年かしてスターリンそっくりさんが現れる。
国民は散々粛清されたにも拘わらず、絶対権力者の復活を待ち侘びている。その国民性はロシア的というか、革命の反動のような気もする。王政復古を待ち侘びている証拠に、ロマノフ王朝の娘が今でも生きているという噂は絶えない。ソ連崩壊で求心力を失っているロシア、ひょっとして誰かの末裔が現れるかも知れない。
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