茅野に行った。駅の改札は昔のままだが、新しく出来た公共施設は過疎の町には不釣り合いだった。美術館には絵画が10点程しかないし、図書館も殆ど本がない。使われていない音楽ホールと老人が居眠りするロビーがガランとしていた。タクシーの運転手によると、冬にはガラスが割れるし、無用の石畳に雪が溜まりスリップするという。毎度のことだが、箱物行政にがっかりする。
折角来たので、温泉にでも浸かろうと案内所の人に聞くと、隣駅の下諏訪温泉がいいと言う。東京とは逆方向の中央本線に乗り、上諏訪駅で降りる。金曜日だというのに人気は殆どない。立派な温泉宿があったので、思い切って敷居を跨いでみた。受付にはおじいさんが番頭をしていたが、耳が遠いのか叫んでもちっとも気が付かない。暫くして孫のような少年が降りてきて、日帰り入浴はOKだと言う。
客は誰もいない。突然だったが、廊下は良く手入れされ綺麗だ。温泉は滾々と湯が湧いていた。湯船を独り占めし暫し息をつく。それにしても、いつ来るか分からない客のために惜しみなく流れる湯は贅沢の極みだ。日本の温泉文化はかくも奥深い。遥々来た甲斐はあった。
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