Thursday, 19 September 2013

シューンベルグの一夜

テニス仲間のYさんが演奏会に出るというので駆け付けた。Yさんはセミプロのビオラ奏者だ。本業は会計士、とてもそんな風には見えないが、天性の音楽センスと趣味を徹底的に追求する姿勢に感心する。今夜は何とドイツのプロと共演するという。


最初の曲はチャイコフスキーの「フィレンツェの思い出」だった。独り身のチャイコフスキーはよく旅行に出ていたが、ロシアから遙々イタリアまで来たとは知らなかった。当時を思うと結構な長旅から生まれた作品だ。ただメロディーは凡そ曲名とは縁遠く、まるでスラブ風だった。2曲目は本日のメイン、シェーンベルグだった。難解な曲なので、毎日練習が大変だとは聞いていたが、やはりよく分からなかった。暗い導入から突然陽気になったかと思うと、いつの間にかフィナーレがやって来た。ただ意外に現代のアンニュイな世相にマッチしている処もあった。最後はブラームス、今までのモヤモヤした気分が吹っ飛び、目出度くお開きになった。


帰り道、知人と話していると、シェーンベルグ兄弟の孫はミュージカル「レ・ミゼラブル」の作曲者だと分かった。ミス・サイゴンのミュージカルも手掛けたらしい。世界で最も分かり難い作曲家の孫が、世界で最も親しみのある曲を作るとは、何とも不思議な巡り合わせだ。そして、オーストリアの靴屋の息子がアメリカに渡り、そこで作った曲を150年後にドイツ人がやってきて私の友人と共演する・・・・・、これもそうだ。

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