思えば20代から良く足を運んだ。決して安い店ではなかったが、年中置いてあった新政の樽酒がお目当てであった。小作りで適度の空間は快く、芸者上がりの女将さんはきりっとしていて、背筋を伸ばして飲む雰囲気があった。何故か自分の祖母に似ていたので、特別親しみがあった。
そんな女将も80歳を超えた頃から、老いが出てきた。ある時、癌で余命幾ばくもない先輩と飲みに行った。「お互い若い頃は良かったね」と交わす言葉を横で聞きながら、涙が止まらなかった。店内に若い頃お客さんと撮った写真が飾ってある。その時はそれをまじまじ眺めては、昔は綺麗な人だったんだ、と改めて思ったものだった。帰る時にカエルの土産をくれる。それを見ながら・・・ご冥福をお祈りします。
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