Friday, 12 April 2013

闇を見つめて


朝日新聞の日曜版GLOBEは、各国のベストセラー本を紹介している。暫く前にピーター・ロビンソンの「Watching the Dark(闇を見つめて)」が出ていた。舞台がエストニアだったので、早速読んでみた。あらすじは、英国の検査官が殺害された事件の究明だ。犯人を探す内に、被害者の写真にエストニアの地ビール”A. le Coq”が写っていたところから、舞台はエストニアの首都タリンに移る。失踪した英国少女の事件の関連で、ドラックや違法労働のロシアマフィアが浮かび上がってくる。小説は兎も角、タリンが出てきてそこそこ楽しめた。

例えば、主人公の探偵が良く行くのは、St.Patrick'sという寂れたパブだった。旧市街の中心にあるが、いつも人気のない空間で気持ち悪い店だった。ここだけではないが、タリンのパブは変に奥が深いところが多い。小説を読んでいる内に、人身売買やマフィアの打ち合わせ場所に使われてるような気がしてきたエストニアの3割はまだロシア人だ。一見治安はいいが、黒スーツとシルバーの高級メルセデスで闊歩している、その筋と思われるロシア人を思い出した。

本では、ベラルーシから出稼ぎに来た男の証言が、究明の手掛かりになる。男は隣国のラトビア経由で入ってくる。エストニアとラトビアは共にEU国なので、勿論国境もない。ただそうした東欧、旧ソ連からの違法移民が多いため、抜き打ち検査がある。高速バスが突然覆面パトカーに止められ、警察官が乗り込んで来てビックリした経験もある。

また少女はヘンパーティー(Hen Party)で酔っていたところを拉致される。聞いたことがない言葉だったが、結婚前に女友達で騒ぐパーティーらしい。ロンドンから1万円程度で来れるので、週末のタリンはこうした若い英国人でごった返す。彼女もそんな一人だったのだ。ともあれ、時には毛色の違う世界も覗いてみるものだ。
 
 

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