Thursday, 14 March 2013

中国の档案(タンアン)

中国の新たな国家主席に、習近平が就任した。太子派と呼ばれる共産党の子弟だそうだ。これから10年、この人の下で中国はどうなって行くのだろう。

今から20年以上前になるが、中国の仕事をしていた時期があった。明後日北京に出張、と言う時に天安門事件が起こった。Y部長から自宅に電話があり、出張は取り止めになったと連絡があったのが昨日のようだ。当時の中国はまだ夜明け前だった。上海のホテルでは、外人が勝手に出歩くことも憚れた時代だった。ある時とある公司(コンス)に行くと、エレベーターで茶色の封筒を抱えて乗ってくる人がいた。同行していた現地の駐在員が、こっそり「あれは档案(タンアン)袋だよ!」と教えてくれた。档案とは、共産党党員が人々の戸籍、思想、心情などを書き込んだ、云わば個人情報ファイルである。中味を見ることが出来るのは、一部の共産党幹部のみである。その実態と怖さは、小説「ワイルドスワン」や「上海の長い夜」で詳しく述べられている。

流石今では封筒を持ち歩くことはないだろうが、制度は依然存続している。タンアンは人々を見えない鎖で繋ぎ留め、就業、結婚、転居などの節目に顔を出す。普段は大人しいが、文革のように政情が不安定になった時が危ない。人々が、表だって政府を批判出来ないのはこのためだ。変わっているようで、変わらない中国がここにある。

No comments: