遅ればせながら、アベノミックスの先生と言われる浜田宏一さんの本を読んでみた。例の「アメリカは日本経済の復活を知っている」だが、デフレ脱却の論理が単純明快だった。「日銀は本格的に買オペをやれば、円が増えて円安になる」だ。ゼロ金利が長引く中、オペという刀を持っていながら放置した“不作為の行為”を糾弾している。
面白かったのは日銀の体質だ。日銀はインフレ退治には熱心だが、デフレはそうでもないことだ。氏はこれを日銀の庶民感覚から来るという。日銀職員のように給料が安定していれば、物価が安くなることは心良いからだ。退治するはずのインフレがターゲットなることも、彼らの感覚では自己矛盾するらしい。「バレンタインの義理チョコ」の話だ。昨年の2月14日(バレンタイン日)に、日銀はインフレターゲットを1%に設定した。ただこれはアメリカに追随したポーズだったので、やる気の無さが市場に見抜かれ逆に円高が進んでしまった。これらを総括して、白川総裁を「歌を忘れたカナリア」と評している。
本を読んでいて、Oさんの事を思い出した。Oさんは銀行の秀才で、英国の名門大学から帰ってくると20代で東洋経済から立派な金融の本を出版した。風貌も白川さん似で、いつもパイプ片手話す姿は格好良かった。しかし管理職になり現場に出ると、若い人から散々酷評されるようになった。感覚が浮世離れし、目の前で起きていることが見えてこなかったからだ。著者は毎朝の通勤電車の飛び込み自殺にも言及している。最近の株高、円安を見ていると、やるべき立場の人がやらなかった責任って、結構大きかったのではないかと思ってしまう。
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