オーエンの理想郷
今週、世界的な食品メーカーであるネスレ(Nestle)が、アフリカで児童労働の疑惑があると報道された。場所はコートジボアールのココア工場であった。コートジボアールでは、世界のココアの35%を生産しており、5‐17歳の子供180万人がそれに携わり、その40%は未就学という。学校にも通っていない子供が作ったココアの味は、想像しただけで気味が悪い。
この児童労働、先に紹介した小説「ミレニアム」の中でも出てきた。スウェーデンの仔会社が、ベトナムで子供を働かせた事実が明るみになり、トップが更迭される。長編小説の最後を締める部分で、この問題の大きさが浮き彫りになっている。
先般スコットランドを旅した際に、グラスゴーにある「ニュー・ラナーク(New Lanark)」に立ち寄った。産業革命の最中、ロバート・オーエン(Robert Owen)が作った紡績工場、住居、学校が一体となった理想郷である。それまで労働を課していた子供に、初めて教育の機会が与えられた場所である。今では世界遺産に指定され、入り口には「若い人への教育が施されれば、不正や圧政への抵抗が育ち、引いては戦争を防げる」と書いてあった。こうした崇高な発想は中々日本人にないだけに、つくづく感心した。
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