Sunday, 19 January 2025

トランプの3ルール

トランプ氏の若き日を描いた映画「アプレンティス(見習い)」が公開された。辣腕弁護士氏の下で、叩き込まれた3つのルールが話題になっている。

その1は「攻撃・攻撃・攻撃(atacck,attack, attack)」、その2は「非を認めるな(admit nothing and deny everything)」、三番目は「勝利を主張し続けろ(no matter what happens, you claim victory and never admit defeat)」である。 

 今までにも「弱みは見せるな」とか「至らぬは他人のせい」「反対する奴を黙らせろ」など、過激な発言は多かったから今更驚かない。それにしても一国の大統領となると、その品位に改めて首を傾げたくなる。

 こうした恫喝と強要で相手を揺さぶるのはトランプに限った話ではない。アメとムチを使い分け、人参をぶら下げながら鞭を入れるのはビジネスの常套かも知れない。ではそんな人にどう立ち向かうのか? 先日とある国際通と話していたら、その力を上手く使う事、つまり柔道の返しだという。 

 例えばUSスチールの例を取ると、アメリカが「日本の買収を認めない」というなら、日本は「だったら中国の鉄鋼会社を買収する」と切り返す。中国の世界シェアは約50%、今の不況で一社ぐらい売りに出る処もあるかも知れない。

 まして訴訟なんて以ての外、真向に組めば高い弁護士料を取られて泣くのがオチである。この際、違約金は払ってでも一度撤退した方がいい。その辺のブラフのセンスが政治家にあるといいのだが・・・。

全豪オープンテニス2025

全豪オープン2025が始まった。今年は何と言っても錦織選手の復活である。香港OPで準優勝してランキングも100位内に入った。2回戦でPaulに敗れたが、サービスは以前に比べとても良くなったし、ストロークも安定していた。ただ問題は体力で、グランドスラムの5セットを戦い抜くのは限界なのだろうか。

 今回の大会の注目を集めたのは10代の若手の台頭だ。ルブレフに勝ったブラジルの18歳のフォンセカや、チェコの19歳のメンシルクなど、体型もしっかりして十分世界で通用する風貌だった。彼らは若いから、疲れと怖さ知らずなのが良く分かる。

一方かつてのレジェンドが早々敗退しているも気になる。チチパスやメドベージェフ、フォンセカなどが姿を消す中、ジョコが一人残って頑張っている。

 そしてもう一人、フランスのモンフィスもいた。昨日は強豪フリッツに競り勝った。緩い球にフリッツがイライラし、強打してアウトになる場面が多かった。彼は38歳、そんな老獪な戦法があれば、錦織の35歳にもまだまだ可能性が残っている。

 そのモンフィス(Monfils)の名前は、読んで字のごとく「私の息子」である。テニス選手には変わった苗字の人が多く、例えば優勝候補のシナ―(Sinner)は「罪人」である。

 中でも笑ってしまったのが、予選を勝ち抜いたオーストラリアのスクールケイト(Schoolkate)である。ダニエル太郎に1回戦で勝った人だが、直訳すれば「学校のケイトちゃん」になる。まさか苗字に好きだった女の子の名前を付ける訳もないだろうが・・・。

Monday, 13 January 2025

エリセーエフの生涯

ロシアを出て他国で暮らすロシア人は、約1500万人もいるらしい。昔NYのタクシーに乗ったら、運転手は英語が片言のロシア人だった。アメリカには300万人のロシア人がいると云うが、ラフマニノフやロストロ・ポービッチのようなインテリ層だけではなかった。

日本に来た人も多かった。ある時会社にすらっとして可愛らしい子が入って来た。八頭身の色白で日本人離れした美人だった。聞くと「私には八分の一のロシア人の血が入っています」と言う。だとすると曾祖父はロシア革命の時にやって来たのだろうか?相撲の大鵬や野球のスタルヒンと同じルーツに妖艶さも際立った。

ところでもう一人、日本と所縁のあるロシア人がいる事が分かった。それはセルゲイ・エリセーエフ氏で、後にハーバード大で東洋研究の祖になり、ライシャワーなどの知日派を育てた重鎮である。

彼は1900年代の初頭に帝大に留学したロシア人第一号だった。ただ帰国するとロシア革命が起き、ブルジョワ家庭の一家はフランスへの亡命を余儀なくされた。

 その半生を綴ったのが倉田保雄氏の「エリセーエフの生涯」(中公新書)だった。著者の「ナポレオンミステリー」や「エッフェル塔物語」など、その軽快でウィットに富んだ文章は快く、本書にも至る所でその才覚が発揮されていた。やはり語学に長け、広い交友関係を持つジャーナリストの筆は違う。

 本の中に、ヌイイの森にある「アメリカンホスピタル」が出て来る。ヨーロッパでも最高の病院で、アラファトの子の出産のようにアラブからやって来る人も多い。全館個室で食事は三食フランス料理というので、患者は退院する時に体重が増えるのが悩みである。

その病院だが、かつてエリセーエフ家の別荘だったと聞いて驚いた。エリセーエフ家はロシアの大富豪だったが、こんな所にも露仏の繋がりがあった。

Saturday, 11 January 2025

アランの話

ロシアの戦争が長引いて、既に死傷者は80万人を超えたという。戦闘員だけでなく不審死も多い。記憶に新しいのはワグネルのプリゴジン氏や反体制のナワリヌイ氏である。その他にも財閥の長や軍の要職もいた。

 ロシアのこうした政敵を葬る風土はいつから来たのだろう?思い当たるのはスターリン時代の大粛清である。その数1000万人とロシア革命の時の皇帝派もそうだったが、そんな殺戮が無ければ今のロシアの人口は2億人を超していたかと思う。

一方で不思議なのはそれを支持する国民も多いという事実である。情報操作もあるだろうが、今のプーチン時代もそうだし、その保守的な国民性は自身にとって謎である。

ロシアには今まで行った事も無ければ、話したロシア人もいない。ただ昔の本や映画、少しの体験を通じて興味は尽きないのである。真っ先に出て来たのが旧知のアランであった。

昔パリで一緒に仕事をしていたポーランド移民の末裔である。名前はアラン・〇〇スキーと言って、ポーランドからフランスに逃れてきた4代目、金髪に青い目をした大人しい人だった。 

彼の曾祖父はポーランドの農民だった。当時のポーランドはロシアの支配下にあり、そのロシアもクリミア戦争に敗れて国は疲弊を極めていた。取り分け土地を持たない農民(農奴)の生活は困窮し、各地で蜂起や反乱が頻発した。 

 ポーランドもその例外でなく、1863年1月に大規模な反乱が起きた。政府は取り締まりと弾圧を行い、その結果7000人近い農奴が難を逃れてフランスに亡命したのであった。彼の曾祖父もその一人であった。

 アランは寡黙な人で多くを語らず、勿論そんな先祖の話なんかした事はなかった。今ではひっそりと緑多いパリ郊外に住んでいた。ただ彼の仕事場はパリ中心地だったのに、ある時「家族は今まで一度もパリの都会には出た事がない」と聞いて驚いた。100年以上経っても、未だに目立たない生活を余儀なくされていたのかも知れない。

Monday, 6 January 2025

USスチールの買収

日鉄が買収しようとしたUSスチールだが、バイデン大統領の政治判断で阻止された。咄嗟に思ったのは「その付けを誰が払うのだろう?」の素朴な疑問だった。先方の経営と労組も賛成していたのに、全米労組が反対し大統領選挙に政治利用されてしまったようだ。所詮これは経済の話だから、また二転三転あるかも知れない。

そもそも、アメリカの製鉄産業の斜陽はいつ、どこから来たのだろう。先日、元鉄鋼会社の人に聞いてみると、それは90年代から始まり、「ヒトがいなくなった」のが原因と言う。優秀な技術者は南のサンベルト地帯や東海岸、シリコンバレーに行ってしまい、鉄鋼、自動車産業には来ないらしい。だから今ではこの一帯を、ラストベルト(錆びついた工業地帯)と呼んでいる。 

 アメリカの製鉄会社がここまで持っているのは、「(手前味噌かも知れないが)日本の製鉄各社が長い間現地に人を派遣して、技術支援して来たから」かもしれない。ただ嘗ては世界一の粗鋼生産を誇った日本の鉄鋼産業は、今や中国の1/10以下である。誠に情けない限りである。 

日本の製鉄技術で、大きく成長を遂げたのがその中国である。代表的なのは70年代の宝山製鉄であった。山崎豊子の「大地の子」の舞台にもなり、仲代達也演じる日本の技術者と、上川隆也こと陸一心の日本人残留孤児の物語には胸が詰まった。文革で疲弊した中国を救ったのは、日本の鉄鋼技術だった。

 韓国の浦項(ポハン)製鉄もあった。新日鉄の支援で進められ、韓国の経済成長のエンジンになった。ところが昨今の徴用工の資産差し押さえなど、恩を仇で返された気分である。今回の事件を通じて日本の人の好さと、業界の不条理を感じるのである。

Saturday, 4 January 2025

振込詐欺の被害

先日、履き慣れた靴がすり切れて来たので、ネットで同じものを探した時だった。古い型だったので中々在庫がなかったが、偶然それも希望のサイズが見つかった。しかも値段が通常の1/3程度と安かったので、早速申し込む事にした。

すると支払いはビットキャッシュという。その時初めて知ったのだが、BitCashとはコンビニで買えるカードであった。ひらがなのIDが付いていて、それを入力すれば支払いが完了する仕組みであった。馴染みのない決済方法だったが、金額も左程大きくなかったので言わるままに済ませた。

ところが数日して「注文の商品が欠品しているのでキャンセルする」と連絡が来た。「ついては返金するから」と返金担当者のLINEに誘導された。そして受付サービスセンターと称する別人から、「PayPayで返金するのでコードは?」と聞いてきた。 

 PayPayなんかやっていないし、「返金額はいくらか?」とおかしな事を聞いてくる。その時初めて何か変だな?と気が付いた。多分その番号を連絡すると、更なる被害に繋がる仕組みなのだろう。

 ショップのサイト名は「KA Store」、振り込め詐欺は他人事かと思っていたら、まさか自分が引っかかるとは、皆さん用心しましょう。

Friday, 27 December 2024

クリスマスソングと聖書

クリスマスソングは、何とも言えないノスタルジーがある。ジングルベルやサイレントナイトなど、昔流行ったペリー・コモやパット・ブーンをyoutubeで探してその余韻に浸っている。

その中にあの有名な「牧人と羊(First Noel)」もあった。ノーエル、ノーエルが繰り返される曲は耳障りがいいが、良く聴くと歌詞の中にイスラエルが入っていた。ノーエルの次には、Born is the King of Israelが来る。King of Israel(イスラエルの王様)は、勿論イエスの事である。

 クリスマスはキリスト教の行事で、サンタクロース村もフィンランドにあったりするから、てっきり西洋文化のイメージがあった。ただそれが現在紛争が続くイスラエルが舞台になると、ちょっとお祭り気分も萎えてくる。特にガザ地区ではもう4万人を超える死者が出ている。ホロコーストを体験したユダヤ人が、今度は自らジェノサイトの加害者になっている。

 そんな事もあり、最近出た船津靖氏の「聖書の同盟」を読んでみた。ただ事態はより複雑で益々分からなくなったしまった。例えばアブラハムの孫のヤコブ(イスラエル)はユダヤ人、妻サラの女奴隷の子がアラブ人のイシュマルだから、両者の根っ子は同じという。 

又旧約聖書はユダヤ教、新約聖書はキリスト教を扱っているので、これも両者の根っ子は同じという。アメリカがそこまでしてイスラエルを支援するのも、イスラエルの「出エジプト記」に、アメリカが建国の歴史を重ねるからだという。

今起きている惨事が肌感覚で理解出来ないのは、あまり聖書に馴染みない為かと思えてきた。