Sunday, 30 March 2025

マロリーの手紙

暫く前から「終活」なる言葉が横行している。人生の終わりに向かって身辺を整理・準備する。アルバムや日常品の廃棄から始まって、お墓を買ったり遺言書を書いたり、いくら暇を持て余しているとは言え、何か違うのではと常々思っている。

人はいつ終わりが来るのか誰もが予期できない。植物人間で100歳まで行くのか、将又交通事故で明日その日が来るのか、正に神様のみが知る人の運命である。せめて最後の時まで、精一杯生きるのが人の道と思っている。だから前倒しで整理する何てとんでもいない。

処が自身が死んだあと、その日記が白日の下に晒さたらと心配になる一冊があった。それは長年のファンであるジェフリー・アーチャーの小説で、「遥かなる未踏峰(Paths Of Glory)」である。物語はエヴェレストの初登頂を試みた英国登山家のマロリーの話であった。彼は稀有な運動能力でエベレストの初登頂に抜擢されたが、最後は暫くして頂上付近で遺体が発見された。初登頂したのかしなかったのか、当時は国の威信が掛かっていたので大きな話題になった。

J.アーチャーはその謎を解明しようと、マロリーが妻のルースに宛てた手紙を解読して本にした。勿論遺族の同意を得ていたのだろうが、流石この手法には不快感が募った。

漱石や鴎外の初恋の手紙もそうだったが、これは禁じ手である。ファンには垂涎ものかも知れないが、墓場の陰から「そんな事しないでくれ!」と声が聞こえてくる気がする。そう思うと終活なんて嫌な言葉だが、強ち聞き流せないのである。

Sunday, 16 March 2025

トランプ砲

連日のトランプ砲に、世界が振り回されている。グリーンランドやパナマ運河の買収、カナダの併合、最近では関税の引き上げで、自動車や鉄鋼アルミに25%、カナダ・メキシコに25%、中国に10%を表明、連邦職員のリストラやUSAIDの廃止もあった。

最初は強硬に出て取引を優位に進める、彼のやり方のようだが、果たして思惑通り進むのか甚だ疑問である。そもそも関税を高くすれば、モノは入って来ないかも知れないが、アメリカ国民は自国製の高い商品を買わなくてはならない。

事実そのインフレ懸念で、このところ株価は大きく下がっている。今後もその傾向が続けば、国民の不安は大きくなり、何処かで反動が始まると思っている。トランプに投票した共和党支持者が、気が付けば自身が解雇されたりもしている。まだ幻想に浸っている人が多いから持っているが、厳しい現実に直面すれば自ずと心も離れていく。

処で昔NYの本屋で買ったトランプの本が出て来た。「不動産投資で富を成すには」の副題が付いている。改めて拾い読みすると、つくづくおカネに対する執着がケタ違いの人なのが伝わってくる。

ウクライナとロシアの和平交渉もそうで、停戦に資源開発を使う発想や、ガザをアメリカが支配する感覚もその辺から来ているのだろう。

それから矢継ぎ早にカードを切る姿に、何か焦っているように思えてならない。78歳という年齢がそうさせるのか、将又中国の脅威なのか、アメリカはまだまだ列記とした大国である。もっと堂々と構えればいいのに。

Wednesday, 12 March 2025

アマテラスの暗号

先日、秋篠宮家の長男悠仁親王の会見があった。普段生の声に接する機会がなかったので、関心を集めた。これから筑波大に進むという。筑波は陸の孤島なので、昔から同棲する学生が多いと聞く。余計な事かも知れないが、将来の天皇になられる方なので、間違いがなければいいが・・・。

その皇室だが後継者不足が問題で、特に男子の継承者が少なくなっている。このままだと天皇制(国体)の維持に重大な危機を迎える。戦後に皇室典範の改正で宮家が制限され、もはや側室を公にする時代ではないから、当然と言えば当然の成り行きなのだが。

天皇家が弱体すれば、日本が日本でなくなる。そんな懸念から書かれたのが、今ベストセラーになっている伊勢谷武氏の「アマテラスの暗号」である。アマテラスやスサノオとは誰なのか、神武天皇に始まる日本の起源は何だったのか?中国の諜報員も暗躍する、中々の展開で面白かった。

一部ネタばれすると、天皇の祖先はユダヤ人という。確かに祇園(Gion)はシオン(Zion)、掛け声の「エンヤラヤー」はヘブライ語の「エァニ・アーレル・ヤー(私はヤァウェを賛美します)」、出雲の稲佐は否(ノー)か然(イエス)、伊勢はヘブライ語の「助け」でイザヤの語源とか、両者は不思議な程似ている。

昔エストニアのタリンに住んでいた頃、何気なく通った家に天皇家の菊の紋章が掛かっていてビックリした記憶がある。祖先はユダヤ人と言われて嬉しい人はいないと思うが、ハンティントンの「文明の衝突」でも日本民族は稀有と言っていた。一見無関係に見える元気のない日本と己の出自、その意外な繋がりに興味を持ったのである。

Friday, 7 March 2025

老人と白米

 先日の昼時、腹が空いて通り掛かった中華料理店に飛び込んだ。ただ入ると、白いテーブルクロスと豪華な装飾に圧倒された。「間違ったな?」と一度は出ようかと迷った。ただ外は寒いし所詮はランチなので、結局「まあいいか」と諦めた。

店内はガラガラで、「よくこんな店がやっていかれる?」と待っていると、暫くして白髪の老人が入ってきた。足取りが危なく、歩くのもやっとだったが、係の人が席に着かせた。その人は常連風で、昔は大会社の重役でもしていたような風格があった。

ウェイトレスは「いつものでいい?」と聞いた。ただこれにはビックリした。まるで居酒屋の女将さんが話すような感じで、立派な店には相応しくなかった。白髪の人の着ていたジャンパーはヨレヨレで、奥さんに先立たれたのか見すぼらしかった。そして遥々こんな店まで足を運ぶ余生に思いを馳せた。

その人は(いつもと同じの)麺と白米を食べていた。その(一日一回の)白米が何とも侘しかったのであった。店が立派だっただけに、そのコントラストが意地らしかった。

故吉村昭氏の短編小説「碇星(いかりぼし)」が10版を超えている。どれも人生の終わりに差し掛かった男の話である。デパートの喫煙所で毎日時間を潰す男達の成り行きや、定年後に会社から斡旋された葬儀会社の男が、元上司から死後の世話を頼まれるとか、中年女を後輩に世話する話など、場末の人間模様であった。

吉村さんは「長編小説を書いた後、2〜3カ月は放心状態になる。そんな時短編を書く」と言っていた。息抜きで筆が走ったのは分かるが、こればかり弱った男の暴露小説だった。もしも彼が存命なら、こんな復古版なんか許さなかったのでは?と思った。

老人は体力も衰え、人と交わる機会が少なくなるから喜怒哀楽がなくなり、預金も尽きるから行動範囲は狭くなるし、特に伴侶に先立たたれると食事に困る。やっと定年を迎え自由な生活が待っているかと思いきや、晩年になると坂は益々キツくなるのであった。

Wednesday, 5 March 2025

ボブ・ディランの映画

久々の雨日が続いている。こういう時は映画とグルメに限ると、久しぶりに都会に繰り出した。

まず映画だが、ボブ・ディランの若き日を描いた「名もなき者(A Complete Unknown)」である。音楽には余り詳しくないが、1960年代から始まったフォークソングの草分けで、ジョーン・バイズとも個人的に親しかったようだ。

実は彼が初来日した1978年に、武道館で行われたコンサートに行った事がある。とある人に連れて行って貰ったのだが、知っている曲は「風に吹かれて(Blowin'in the Wind)」だけだった。それ以外はロック風で、けたたましい響きは私の好みではなかった。

ただ今回映画を見てその理由がよく分かった。彼は60年代前半から活動を開始したが、4〜5年して弾き語りからロックに転向していたのだった。映画でも突然の変わり身に、観衆のフォークファンから不評を買うシーンがあったが、それこそが今回の作品の焦点だった。

もう一つは「孤独のグルメ」である。テレビでは時々観ているが、流石に映画になるとあまり期待しなかった。処がパリ・韓国、東京を舞台にした中々の出来で面白かった。いつも思うのだが、「他人のしかも中年男性が一人で食事するのを見て何が楽しい?」と不思議であるが・・・。

そしてグルメである。今回はミシュランの星が付いたラーメン屋があるというので行ってみた。それは新宿の「黄金不如帰(ホトトギス)」である。10席ほどのこじんまりした店で、半分以上の客は外国人であった。待つ事1時間、辿り着いたその味はとても複雑であった。「孤独のグルメ」の主人公になって楽しんだのである。

Saturday, 1 March 2025

森林火災

岩手県の大船渡の火事がまだ続いている。今日で4日目になろうか、懸命な消火作業があっても、一度発生すると中々鎮火出来ないようだ。


オーストラリアでも、郊外に車を走らせると火災の跡がはっきり残っていた。茶色に焼け焦げた低木が数十キロに渡って続き、その規模の大きさが伝わってきた。町の人に聞くと、昨年のクリスマスに起きた火災で、車に取り残された人が被害にあった嘆いていた。

原因はユーカリやガムツリーと呼ばれる引火性の高い植物と風である。ロサンゼルスやハワイのマウイ島の火災は記憶に新しいが、風は山から海に向かって吹くのであった。その勢いは想像以上で、ゴルフの手押しバギーが簡単に飛ばされた。

オーストラリアは2016-17年と2020-21年の大きな森林火災で、何と国土の森林の35%を失った。コアラも8000頭が犠牲になった。加えて昨今の大雨による洪水もある。

有名なゴールドコーストも、この1~2月は3分の1の日が雨で散々だった。折角訪れた観光客もさぞかしガッカリしただろうし、来年以降の人が来るのだろうか?と心配になる。自然に恵まれた国土だが、改めて共存の難しさが伝わって来る。

Thursday, 27 February 2025

NSWのゴルフルート

 そのゴルフだが、INSIDEGOLFという雑誌の表紙を松山英樹選手が飾っていた。1月のハワイのカパルアで行われたPGAツアーで優勝した記事だった。35アンダーのコースレコードも出した彼だったが、やはり同胞の活躍を海外で知るのは誇らしい。

早速読んでみたが、中々オーストラリア特有の記事が面白かった。例えば南ア、ベトナム、ポルトガルなど、各国のゴルフ場を巡るツアーであった。日本もその例外でなく、8日間で横浜CCや大洗など5か所でのプレーが入っていた。夜は居酒屋で和牛や魚を堪能し、一人8450ドルというから85万円とまあまあの値段だった。

人気なのはタイのホアヒンでの13日コース、こちらは1955ドルの20万円弱と安った。何故かメンズオンリーなのが気になったが、ピンクのお揃いのシャツに身を包んだ大勢のゴルファーが参加していた。

その他、グッズ販売の中に多かったのが個人の電動カートである。メンバーになると倶楽部の倉庫に置いてくれるので、いちいち借りる必要もない。歩く人にはリモコンの付いたバギーもあった。一度使って見たが、上り坂でこれがあると楽だった。

ゴルフ場は都市の近くに点在する。大きな都市になればなるほど、その数は多くなる。結婚式やパーティーなどの会場を兼ねている。ただ大都市になると移動も大変なので、中くらいのブリスベンやパースが最適と思っている。

ただこの雑誌に、メルボルンとシドニーの間、ニューサウスウェールズ(NSW)の海岸線900㎞に多くのゴルフ場が点在しているのも分かった。滞在型もいいが、いつか試してみたいルートになった。